2012年7月19日木曜日

感想文 僕たちのバイシクル・ロード

こんにちは。

ペルーアンデス編真っ只中ですが、ブログのストックが尽きました。

もちろん続きは書きますが、ブログを書くのは案外体力を使うので、

その場凌ぎに最近見た映画の感想を載せたいと思います。

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遅ればせながら映画『僕たちのバイシクル・ロード』を見た。
iTunesでダウンロード販売が始まったので。

同じ自転車乗りから見ても、おいおいと突っ込みたくなる無鉄砲さにハラハラさせられつつも
無知だからこそ溢れ出るエネルギーが作品を通じて感じされる良い作品だった。

もっとも共感できるのは自転車乗りの人だけで、自転車に乗らない人が見たら
なにこれ?!と思うかもしれませんが 笑

彼らは南極大陸を含む7大陸走破をこの旅で達成している。
7大陸走破といってもアフリカや南極なんかは大陸の末端を走っただけだし、
総走行距離は僅か13000km。(きちんと各大陸を走破しようとなると50000kmを越える)
映像の半分が船上!?という突っ込みはご愛嬌。

走行中の映像は見ているこちらが酔っ払ってしまうほど手振れがひどかったが
逆に道路のガタつき加減が鮮明に伝わってくる。
画質もそれほど良くはないのだが、ここで重要なのは画質がどうであれ撮れているということ。
僕も動画を撮ることはあるが、気まぐれで数日に一度程度しか取らない。
動画を継続して撮ると、こんなにもリアリティのある旅を記録することができるのかと少し嫉妬さえ覚えてしまった。


作品中、印象に残ったのがタイで得体のしれない食べ物を道路脇の屋台で見つけ食べるシーン。
恐る恐る食べてみると、思いのほかウマイ。
自転車で旅している以上、腹は減る。
ガソリンとなる食事は現地飯に頼ることになる。

なるべく味の想像のつく食べ物をチョイスしていても
僻地を走っていると必ずや、こうして見た目から味の想像のつかない食べ物を食べることになる。

僕の経験上、味の好き嫌いや好みはあるとしても、人が食べるものなので
まったく食えない食い物っていうのは、なかなか出会う機会は少ない。
もっとも『やむを得ず食う』という食事がこの中南米いかに多いことか。
それでも毎度こうして初めてみる食べ物を喉に通す時は緊張する。
食ってみると、『ん?案外いけるぞ』となりいつしかそれがその国の定番の飯となる。
自転車で旅をするということは、こういうことなのかもしれない。

とはいえ、時折目にする馴染みのお店を見つけると、
田舎道の夜の自販機に群がる虫のごとく、ついつい吸い寄せられてしまう。
都市部で発見したセブンイレブンに羽が生えたように入店していく彼らの姿と
自分の姿を重ねてしまい、クスリと笑ってしまった。


7大陸の最後の地アフリカに降り立つ彼らの心境は“歓喜”とか“待望”とか
プラスなイメージの感情とは正反対のものであった。

旅が確実に終わる実感。
待ち受ける現実社会。
元の生活に戻れるのか?という不安。

ただ何も考えず、太陽の出ている限りペダルを踏む日々が終わる。
夢は必ず覚めるときが来るのだ。
どんなに目を背けていても向き合わなくてはいけないときが来る。

けれど、旅の終わりは決して『負』や『マイナス』ではない。
旅の終わりには、いつだって一時の叙情感がつきまとうもの。
ただ、それだけだ。

あらゆることに対し自己責任を持ち、自らで体験する。
これが自転車旅の醍醐味だ。
自分の体力を鑑みて今日の目標地を決める。
自分の財布と相談し、食事と宿を決める。

大きな轍を刻むためには
家族や友人、名も知らぬ人…多くの人の支えなしでは成し遂げられないということを
実体験をもって体感している、このことを知れるだけで大きな経験だ。

旅に出る前は想像もつかないような第三世界の混沌にいつの間にか馴染んでしまうように
難解で複雑な現実社会にも、いつしか何事もなかったようにすんなり元に戻ることが出来るだろう。
人の体はあらゆることに都合のいいように出来ているのだ。

僕の旅もいつか必ず終わりを迎える日が来る。
そのとき僕の心には、どんな景色が広がっているのだろうか。






2012年7月16日月曜日

完敗のアンデス

さて、いよいよ今日の途中の分岐から未舗装路に入る。
地図によるとルートは3本ほどあって現在地から近い手前2つは特にローカルルート。
一番奥のルートはかなり遠回りになるものの国道番号的に言えば正規ルートのようだった。
ただ、その正規ルートを調べると、他二つよりもアップダウンや標高自体も高く、何より距離的に60kmほど遠回りになってしまうようだった。
なので、先の2つのルートを優先しつつ、そこの道路状態を見て、走るのが厳しそうだったら、一番奥のコースにしようとフレキシブルに対応していく事に。
途中、野宿の可能性もあることから食料と水もたっぷり持って出発。

ウアマチュコを出るために、急坂があったがそこを越えると断崖沿いをゆるやかに下る気持ちのいい道。
道路も2車線に復活した。
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おおお!
これだよ、これ!
このままずっとゆるい下りが続くようなら、みんな自転車旅行にハマるだろうなぁと思うような道。
左右にはおよそ富士山と同程度の標高の山々を見上げ、それらをゆっくりとスライドさせながら自転車は下っていく。

そんな夢心地も前方に川が見え出したら終了のサイン。

しんどい登りが始まる。
自転車旅行ブームを夢見た自分が馬鹿だった。
世の中そんな甘い話はない。
しかし、この登りがあるからこそ下りがあるわけで、しかし、その登りのきつさは大衆迎合されるものではなく
ごく一部の酔狂な人たちにしか、分かり得ないマイナーな感覚だ。

3000m超のすぐ息が切れる坂道を自重を含めて100km以上の大荷物で重力に逆らう。
その苦痛と快感が相反し共存する感覚は、やはりマイノリティのものであった。

ペルーの坂道標識急すぎません?
実際はもっと緩やか、でもエクアドルは実際にもこんなでした 笑
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15kmほど走って、一つ目の分岐に差し掛かった。
一瞬、ここじゃないだろと思ったが、前方のトラックがその分岐の方に入っていくのが見えたし、GPSで確認してももどうやらここのよう。
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今いるアスファルトとの落差にひるみ、とりあえず前方のトラックの行方を目で追う。
傾斜と路面のせいでかなりスピードを落として進んでいる。
遠くに道が見えるが、間には川があり、橋のようなものも見えなかった。
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い、いけるか?
どうしようかと迷いに迷ったけど、標高的にも、距離的にもここで行っておくのが一番楽そう。
ここは走るのが辛くても、向こうの道まで我慢すればなんとか走れそうだ。

よし…
覚悟を決めて突入。

道はその覚悟が一瞬で崩れ落ちるほどの荒れ具合だった。
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ハンドルと尻が小刻みに震え、時折大きな衝撃にぶち当たる。
そして前日に振った雨のせいで路面がぬかるんでいた。

なんとか1kmほど走って、川面近くまで行った。
そこには先程のトラックもいたが、そこから先の道は見当たらず、あったとしてもこれよりもひどい道で自分には道と認識出来なかった。
何より川を越えて向こうの道に合流出来そうなところはない。

川辺は採砂場のようで先ほどのトラックを含め、数台のトラックがブルドーザーによって荷台に砂を集められていた。

一本目、撤退決定。

とてもじゃないが、ここをずっと走っていくことは出来なそうだったので引き返すことに。
まだ道はある。

帰り道は傾斜もあって、サイクルコンピューターのスピード表示が全く作動しないほどの遅さで登る。
登るというより引き上げるに近い感覚だった。

たった1kmほどの未舗装路を走っただけなのに、元の道路に戻りアスファルトを走るとハンドルと尻に伝わる振動の少なさに驚く。
アスファルトってこんなに滑らかだったのか。

アスファルトは昨日までのアップダウンとは違って下ることなく、ぐんぐんと標高をあげ。
やがて、さっきまで見上げるほどだった山々を今度は見下ろす高さまで上がっていった。
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気がつくと、いつも信じられないところに建っている送電線鉄塔をも見下ろす高さまで道は続いていて
いつのまにかその鉄塔さえ見当たらない、高地に出た。
その景色にはなんとなく見覚えがあった。
コトパクシ登山で行った時の4000mを越えたあたりの高地地帯。
背の高い木々は見当たらず、わずかに生い茂った草がポツポツと見えるそこは、やはり4000m近い標高だった。
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そこは鉄塔さえも見当たらず。
唯一、伸びるアスファルトの道路だけが現代を表現する人工物であってそれを除けば、数百年前のインカの時代からまるで変わっていないのではないのだろうかと思わせるアンデスの原風景だった。
ロードサイドには残雪も散見され気温が低いことを物語る。
そしてついには4000mを越え。
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そこに現れた小屋で昼飯。前日に中華屋でチャーハンをテイクアウトしていた。
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チャーハンはかなり冷えていたものの、この高地にあってこんな手の込んだ料理を食える幸せを噛み締めつつ食らう。

小屋から数km。
リャマの群れを脇目にしながら、そこを抜けた先に2つ目のルートが現れた。
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予想通りの未舗装路。
けれど傾斜も石の大きさもさっきにくらべればかなりマシ。

行ってみるかと自転車を進めた。
ガタンゴトンと揺れるものの何とか進める。
両サイドはキャンプしたらさぞ気持ちいいだろうと思える牧草地が広がっていた。
だが、進むにつれ少しづつ道は大きな石が目立つ道が増えてきた。
それに前日に降った雨が泥になってタイヤやフレームにまとわりつく。

それだけでも進むのが大変だったが決定的だったのは、雨。
雨と言うよりは雹か?
降り出した雨は大粒の雨はあっという間に装備をびしょ濡れにし、僕は慌ててレイン装備に切り替える。
こんな一番の山場で一番最悪な展開。
引き返すべきか、べきでないかかなり揺れながら進む。
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6kmほど行ったところで一気に標高を下げるつづら折れに出た。
ブレーキを握り締めながら一つ目のカーブを曲がろうとした時に、ズリズリっと後輪が泥にめり込むようにスリップした。

ここは見通しのきく場所で、カーブはこの先の下にいくつも見える。
時折、ガソリンを積んだトラックとすれ違ったりしたので、この先にある程度のライフラインがあることは明白ではあったが、
雨でぬかるんだ状態、さらに今雨が降っているこの現状で、進んでいくことは今の自分の力量と精神力では荷が重かった。
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ここも駄目だったか。

行きにかかった時間の倍をかけてきた道を戻った。

3度目のアスファルト。
依然として、雨は降り続いたが走りやすさに変わりはなく、雨を跳ね上げながらさらに標高をあげる。
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天使の湖つまりLaguna Los Angelsと名付けられた湖を過ぎた辺りで、道路の様子がおかしくなってきた。
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道路工事の作業員が目につくようになったのだ。
この時の彼らは路肩脇に排水用の溝を作る作業を行なっていたが、それはもうすぐこの先が工事中になることを示していた。
そもそも今朝の一本目のダートに入った時に見た砂礫場から砂を集めたトラックが、ここに来るまでに何台にも抜かされていた。それは明らかにこの先で工事が行われている証明だった。
4100m付近の全く何もないところの、一体誰が何の目的で設営したかわからない謎の駐車場を過ぎた辺りで、これまで僕を追い抜いていったバスやトラックの渋滞が見えた。
道路工事の始まりである。
渋滞をかいくぐり、先頭に出ると、いったんは片側工事だったのでするすると走り抜ける。
間もなく、全線工事域に入った。
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今日の2つのダートに比べれば、相当に走りやすい未舗装路。
だが、この道路も長くは続かず、ちょうど下りに入る辺りから凄まじく荒れたダートに変わった。
石と言うより岩といったほうが適切なものがボコボコ顔を出す地面。
片側通行のためにさっきまで渋滞していたバスやトラックたちが小石を跳ね上げ僕を次々に追い抜いていく。
おおよそリズミカルとは程遠い、不規則なバウンドを繰り返しながら坂道を下る。
下るといっても全くスピードは出せず、だいたい6km~7km。
常にブレーキを握っていないと、すぐに加速して自転車ごとすっ飛んでしまいそうだ。
下半身は下半身で、岩を超えるたびにパンク防止のための脱重をしなければならず、体重移動でかなり疲れる。
全くもって楽じゃない下りをストレスを溜めながらひたすら下る。
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1000m近い高度をいたずらに消費し、川沿いの道に出る。

しばらく行くと、3本目のルートに差し掛かったが、もうすっかりこの道を進む気力は無くなっていた。

下り基調のこのダートでさえ、この苦労。
アップダウンの激しいこのルート、もしかすると200km近くダートの可能性がある。

もうルートに足を踏み入れることすらなく、自転車は130km先の海岸に伝うパンアメリカンハイウェイを目指して直進していた。
ところが、このルートもまったくもってダートが終わる気配はなく、途中の村のホテルも空き部屋がなくやむを得ず走るしか選択肢がなかった。
川沿いの道はさらに険しさを増し…
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こうこんな道ばっかり。

それでも地図上には主要幹線の一つとして書かれている通り、こんな荒れた道を工事車両がかなりの数で通っていた。

もうしばらく先まで町はない。
今夜のホテルは諦めて、野宿場所を探そうにも川沿いの道のため適当な場所がなかなかない。
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寒いけれど、峠の高原地帯にテントを張ればよかったかと、少し後悔。
夕暮れも目前に迫り、雨足も再び強くなったところで、このあたりにしては立派な家を発見。
お願いして、軒先にテントを張らせてもらった。

テントを張るにしても、これまでの道と雨でドロドロ。
荷物を運び入れると、室内まで汚い泥が入り込み、惨めなキャンプイン。
ほとほと疲れた一日であった。

2012年7月14日土曜日

やっぱり大変な山岳路

前日の激走でヘトヘトになった心身も一晩寝ると、あっという間に回復。
今日は、昨日の頑張りのおかげで50kmちょっとのはずなので楽勝のはずだ。

カハバンバを出ると道は1車線に。けれど道の舗装は続き一安心。
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道は昨日よりも激しくアップダウンを繰り返すコース。
昨日、手元にあったガイドブックを読んだ時、カハマルカ~カハバンバ120kmがバスで4時間に対し、カハバンバ~ウアマチュコ50kmが4時間と書かれていたのが納得できる道だった。
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相変わらず風景は抜群。
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空と山のコントラストは見事で、そこに点在するインディヘナの集落と放牧される家畜たちののどかさは、心癒される風景だったはずだが、正直それらを愛でる余裕はなく。
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一晩寝て体力は回復したものの、筋力はダメージが残っていて漕ぐのがかなり大変だった。
傾斜も少し厳しくなったような…?
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道は相変わらずのつづら折れ。
遠くにこれからの道が見えているにも関わらず、つづら折れだと進んだ距離の割に、直線でみた移動距離はたいして進んでいないので、こんな疲労しているときにはしんどい。

正直、まだ舗装路の状態でこれでこれからの山岳路を走破することができるのだろうか?
一抹の不安がよぎった。

とにかく、もう少し行ったところに湖があるからそこで昼ご飯にしようとペダルを踏むも、なかなか進まず。
湖手前10kmくらいの見通しの悪い、林道沿いでダウン。
体力もそうだが、これから先の山岳路に強烈な不安を少しでも和らげるために、
パナマから大事に持ち歩いているサッポロ一番の味噌ラーメンを食うことに。

麺はカバンの中で圧迫されてボロボロだったが、味にかわりはなく。
日本だったら、かなりひもじい食事であろうインスタントラーメンがこの上なく僕に元気をくれた。

味噌ラーメンで腹を満たした後ようやく湖到着。
そこは案外、ちょっとした観光リゾートになっておりレストランが立ち並んでいた。
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湖には、人口の浮島と家があったが、ここに人が住んでいるのだろうか?
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湖を過ぎ、一度下って、ふたたび登った後ようやく今日の目的地ウアマチュコへ到着。
昨日のようなヘマをしないよう、街の看板で気を抜かずに。
やはりここも街の本体まで結構走らされる。
セントロに着く頃には、雨雲も発達しだし、ポツポツと降りだしてきたのであわててホテルをとった。
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さて、明日からいよいよ未舗装路に入る。
かなり不安は募るが大丈夫だろうか。

2012年7月12日木曜日

お湯を手に入れるのは案外むずかしい

インカの温泉を堪能した後は、再びアンデス山岳路を行く道を通って目指すはワスカラン山の麓のワラス。
手元の地図によると、途中から未舗装路になり、かなりのアップダウンを含むコース。
ワラスまでは530kmほど、山岳路を考えるとおよそ6日から7日程度になる。
そこまで、ここカハマルカが最後の都会になるので食料を買い揃えての出発となった。

カハマルカを出る道は、インカ温泉で数回通った道なので、迷うことなく郊外へ。
さっきまでの都会っつぷりが幻のような牧草地帯を再び走る。

すでにアンデス山中の奥深くに入っているので、取り立てて目立つ急峻な山は見当たらないが
四方を雄大なアンデスの山々に囲まれながら、高原を気持ちの良くサイクリングする。

時折、山を越えるためのつづら折れをぐねぐねと何度も折り返して登る。
相変わらず傾斜は控えめなので、全然苦しくない。
カーブを曲がるたびに、表情の変わる景色が待ち遠しく、ぐいぐいと登った。
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登った後は当然下り。
登りでかいた汗は高地の下りでは少し寒く、下りのたびに着ている服を脱ぎ着し、結構忙しい。
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60km先のサンマルコスにはお昼ごろに到着。
思ったよりも早めに到着したので、目標をさらに60km先のカハバンバに切り替え、早々に街を後にする。
山脈沿いの大きな街々は大体、盆地に作られるので、再び登り。
道は相変わらず、アスファルト。
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途中にあった看板によると、こんな山奥にある道にもJICAが関わっているようだった。
サンマルコスの先の峠を越えると、見通しのよい峠に出た。
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方角的にカハバンバは下の写真の山を越えた辺り。
距離的には、まぁ届く距離だけれど、道は驚くほど下方に向かってスイッチバックを繰り返していた。
つまり、下りた分は登らなければならない。
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下りに入ると自転車はぐんぐん加速し、ぐねぐねを繰り返すワインディングを滑るように進んでいった。
結局、900m程の下り。

そこからは川に沿って徐々に登る道。
見た目にはほぼ平坦に見えるが、高度計を見ると少しづつ標高を上げていく。
見た目と、実際に出ている自転車のスピード感のギャップは精神的にしんどく、既に80km程走った体には応えた。
そして100kmを越えたところでトドメの峠越え。

分かってはいたが、この峠越えはかなり大変だった。
体力はすっかりカラッカラ。
後ろから地元の少年2人に自転車で追い越される。
最後は久々に押しが入るほど疲れていた。
それもそうだ、朝7時過ぎからおよそ9時間ほど自転車に乗っているのだから。
それだけに峠の先に、とうやくカハバンバの標識を見つけた時の安堵感はたまらないものがあった。
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が、この看板はフェイクで、このあたりから住宅はちょろちょろと姿を見せ始めたものの、実際に街の本体にたどり着くまで5km以上走らされた。
大都市にはありがちなブービートラップがまさかこんな山奥の街にもあるとは思いもよらず、既にこの看板で気持が切れていたのでしんどかった。
日も暮れかけた頃にセントロのホテルに到着。
結局125km、2000m近いアップダウンを繰り返した体はヘトヘトで何か食い物をいれないとまるで力が出ない状態。
それと同時に、体がえらく冷えてしまっていてこれでは風邪を引いてしまいそう。
まず、さきにシャワーで体を温めてから、飯に行こうと思ったが肝心のシャワーの湯が出なかった。
そこは電気シャワーだったので、元のブレーカーが切れていると思い、ブレーカーを上げるも何故かそこのブレーカーが
すぐにOFFの位置に戻ってしまう。
助けを求めに、宿のレセプションのおっさんへ相談しに行き、たどたどしいスペイン語で状況を説明するも、
おっさんはパソコンのソリティアに夢中で、座ったまま“ブレーカーをあげるんだよ”としか言わない。
それで駄目だったからこうして、来てるんだよ!と伝えてようやくおっさんはパソコンから離れて来てくれた。

おっさんがブレーカーのスイッチを力いっぱい押し込むと、スイッチはようやくONに。
しばらくしたらお湯になるよといっておっさんに礼を言って、シャワーの準備をする。
素っ裸になってシャワーに行くと、水は冷たいままで、よく見ると再びブレーカーが落ちていた。

おっさん!

ちょっと呆れつつ、素っ裸でレセプションまで行く気にはならないので、何とか手持ちのゴムひもでスイッチの固定を試みる。
ONに固定した状態で再びシャワーの蛇口をひねる。

水はいつまでも水だった。

つまり結局のところ電気シャワーが壊れていたのだ。

いいようのない疲れが、からだの奥から吹き出したけれど、それで状況は変わらないので服を着て再びおっさんのところへ。

またもソリティアに夢中のおっさんをパソコンから引き剥がして部屋に連れて行き、状況を伝える。

「こりゃ壊れてるな」

…もうホントに疲れました。
宿の看板には星が2つついていたが、2つ星ホテルがこの有り様だから参ってしまう。

結局、シャワーだけ別な部屋のを使い、なんとかシャワー問題クリア。

すぐにレストランに駆け込み、ご飯をかきこんだらちょっとだけ、体力は戻ったけどそこから街歩きをする元気はありませんでした。
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2012年7月10日火曜日

皇帝の愛した温泉、僕も愛した温泉

カハマルカに到着したその日、僕はセントロのアルマス広場に面した一泊15ソルおよそ450円のホテルに自転車を押しこんで、すぐ裏から出ているコレクティーボに乗り込んだ。
行き先はInka del banos。
カハマルカから約7kmほど東に行ったところにインカの温泉と名付けられた温泉施設がある。
ここはインカ最後の皇帝アタワルパも足繁く通った名湯で、彼はこの地で温泉に入っているときにスペイン軍に捉えられてしまう。
彼に因んで、街から温泉へ抜ける一本道はアタワルパAv。

20分ほどで到着。
カハマルカを出ると一瞬のどかな牧草地が復活したのだけど、このインカ温泉の周辺はレストランやホテルが並び以下にも観光地然としていた。
入り口を見つけてでチケットを購入。
温泉にはいくつか種類があって2ソル~20ソルまで様々。
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無難そうな5ソルの温泉をチョイスし園内へ。

園内に入るとちょうど両サイドに個室風呂がずらーっと並ぶ。
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さながら一大温泉テーマパークの様相だ。

僕の選んだImperial(皇帝)温泉の建物を発見し、近くにいたセニョールにチケットを提示する。
するとちょっと待ってろと言われる。
周りを見ると皆、順番待ちで待っているようだった。
僕の番号札は111番。
縁起のいい数字だけど、いまお風呂に入っている人達はどうやら90番台。
どのぐらい待つのだろうと思いながら、僕に興味を示して話しかけてくれた女の子としばし談笑。
彼女はリマから来たそうだ。
はるか遠いクスコから足を運んだアタワルパといい、この女の子といいこの温泉はちょっと期待できそうだ。

海外の温泉と言えばこれまで散々がっかりさせられてきた。
たいていどこも温水プールのような施設で情緒はまるでなし、それに日本人好みの熱い湯温はほぼ皆無であった。
エクアドルにもBanosという一大観光温泉があるのだが、ここも似たような感じという話を聞いて行くのをやめていた。
そんな海外の温泉の中で唯一満足できたのがグアテマラのアティトラン湖湖畔にあるエル・ソルだけだった。
まぁ、しかしあそこは日本人経営の宿。
果たして、完全に現地人によって運営されるここの温泉は満足できるクオリティなのだろうかと少しドキドキしつつ順番を待った。

間に20組近い番号の差があったにも関わらず、皆順番待ちの間にどこかに行ってしまっているらしく、次々に番号が飛ばされ僕の番号は思ったよりも早く呼ばれた。
『107、108、109、110、111番』
「はいはーい、ここにいまーす!」
おじさんにチケットの半券を渡して入室。

室内は脱衣所はあるものの、シャワーなどはなく目の前に深くて広い浴槽がドン。
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浴槽は入泉ごとにお湯は張り替えられ、その都度係員が清掃してくれるので清潔感もあり。
何故か鳥の羽が残っていたけど、気にするな 笑
手前にあるレバーを回すと、熱々のお湯がドバドバと溢れでた。
「ウホホッ、これは!!」
もう一方のレバーで水も出せるので好みの湯温に調整してお湯が溜まるのを待つ。

自分も服を脱いで入る準備をしていたら、タオルを持ってくるのを忘れたことに気づく。
が、気にしてられるか!

お湯はすごい勢いで出ていたが、なにぶん浴槽が広いの溜まるのにもそれなりに時間がかかる。
待ちきれずに浴槽に入り、打たせ湯気味でお湯を浴びる。
「あっ♥」
思わず声が出る。
くぅー、たまらなすぎる。

もう、この温泉の気持ちよさを説明するのに言葉はいらない。
この写真で十分お分かりいただけることだろう。
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幸せすぎる。
環太平洋造山帯バンザイだ。

ホカホカになった体で温泉を出ると、簡単に施設見学。
園内中央部には硫黄の香る湯畑が。
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sala de massageというマッサージ部屋も発見してしまい突入しようか迷ったけど、温泉の約4倍の値段だったので諦める。
といっても600円くらいなんだけど。

ちなみにこれがインカの皇帝アタワルパの浸かっていたという温泉。
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ここで入浴中にスペイン軍に捕まってしまう悲運。
スペイン軍よ、ちょっとは空気読んで欲しい。

さて、温泉から街に帰って来たらお腹が空いたのでご飯を食べに。
そういえば体調を崩していたので3日くらいまともに食べなかった。
宿の近くにあった中華でいいかと適当に入る。

そこは普段食べている中華の1.5倍くらい高かったけど、メニューの中にチチャロン・デ・ポヨという文字を発見。
ポヨは鳥でチチャロンは揚げ物だから…
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王者の選択。鳥の唐揚げ。
まぁ衣がないけど、レモン汁付きだし文句なし!
ちなみに揚げワンタンが載ったチャーハンをこっちではアエロプエルトっていうそうだ。
アエロプエルトは空港って意味だから、たぶん揚げワンタンを飛行機に例えてんだろうな。

風呂良し、飯良しのカハマルカ。
マジ最高。

翌日。
また来ちゃった。
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宿の共同シャワーなんて入ってる場合じゃねー。

今日も昨日と同じ風呂でいいかなと思ったら、メンテナンス日らしく一個ランク上の部屋になった。
といってもあんま違いはないかな。

でも湯心地に変わりはなし!

昼から幸せな気分になりました。

こりゃあ宿に戻ったら昼寝かな、なんて気持良く外に出ると、そこに吹き抜けるは一陣の風!
小さな竜巻がなぜか、発生し巻き込まれる。
さっぱりした体が一転して、ジャリジャリの砂まみれ。

温泉台なし。。。

あ、温泉の話ばかりでカハマルカの写真がないとご指摘の皆様。
そうなんです、温泉に夢中でまじで街中の写真がほとんどありません。

でもちょっとだけ観光したクアルト・デル・レスカテ。
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ここは温泉で捕らえられたアタワルパが幽閉された場所で、アタワルパはここに線を引いてその高さまで黄金を集める代わりに自らの解放を懇願したらしい。
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こんな感じに。
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約束通り黄金は集めたものの、結果的にアタワルパは処刑されてしまう。
ここカハマルカはインカ帝国の終焉の地でもあるのだ。

でも、施設内はたったこれだけで、歩いて30秒で見て回れ規模なのに5ソルはちょっと高いかな。
だって温泉1回分だよ 笑
それに入り口が小さすぎて見つけづらかった。
こんなん。
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肩身が狭そうだ。

さて、ここカハマルカは周囲にいくつか目ぼしい遺跡もあって当初はそこも訪ねてみようと思ってたんだけど
ついて早々に温泉に行ったらもうこの街でやることはやりきった気分になっちゃったんで行くのはやめました。

温泉の町カハマルカ。
それでいいじゃないか。
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