2012年11月20日火曜日

世界の王様

塩湖の朝は氷点下。
当然ながら寒い。
朝焼けを横目に見ながらさくっとテントを畳み終えて出発。
澄み渡る空に果てない地平。
今日も景色は最高だ。
が、引き続きスピードは出ない。
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ところどころにこういう穴が空いている。
ここが分厚い塩の岩盤の上ということが分かる。
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4時間ほどかけて塩湖中央部のインカワシの島に到着。
この島はウユニの街からのツアーも寄るところなので各種食料の補給も可能だった。
おばあさんが営業する雑貨屋でお菓子とコーラを買うと、おばあさんがちょっと待ってろと奥からノートを持ってやってきた。
渡されたそのノートは、ウユニを走ったサイクリストたちのゲストブックだった。
もっともゲストブックと言うよりは、おれはこんなすごい旅をしてんだぜ!というようなサイクリストそれぞれの
自慢帳のようなもので、1ページ1ページみんなの我が現れていて見ていて面白かった。
せっかくなので僕もそれに記帳することに。
ところが僕の前に書いたサイクリストが一番の自慢ヤローで世界各国で撮った
自分の写真をたくさん張り付けていたものだから、ページに厚みが出来てしまい非常に書きにくい。
しかも裏面まであった。。。。
ペンでぶすぶすとノートに穴を空けつつもなんとか僕も書き終える。
これで僕も奴ら変態チャリダーの仲間入りだ。
一昨日の、砂山越えにあった自転車の轍の人もここに足あとを残したのかな。
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売店で簡単な補給をして出発。
するも、自転車に妙な違和感を感じて下車。
調べてみるとキャリアのねじが取れていた。
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もともとこの部分はコスタリカ辺りからネジ穴が馬鹿になってきていて、これまでも騙し騙し使っていた部分。
これまでのあの悪路でよくここまで持ったと言ったほうが正しい言い方だろう。
スペアのねじを出して、接着剤で無理やり取り付ける。
念のため針金でさらに補強をかけた。

キャリアの故障で残りの塩湖走行に不安がよぎったが
インカワシ以東の轍は広く、固く踏み固められていて完全にフラットな道だった。
この辺はツアーのメインストリートだからだろう。
打って変わって軽快にスピードをあげれる道になったが、白い大地にうっすら黒ずんだ轍が残念である。
とは言うもののこの地を思うがままにかっとばせる爽快感はこの上なくたまらない。
人間現金なものである。

走っていると自然に笑いがこみ上げてくる。
昨日同様、進んでいる感は全くないのに、足元をみると高速で塩のひび割れが流れていく。
浮遊感はさらに強調されて、このスピードならこのまま空に向かって飛べるんじゃあないかと錯覚するほどだった。
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遥か遠くにツアー客が見える。
わざとらしく、彼らの近くまで寄って猛スピードで駆け抜けてみた。
彼らはツアーで限られたポイントでしか止まれないが、自転車ならどこでだって止まれる。
どこでテントを張ったっていい。
すべて僕の気分次第だ。
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自由だ。
と思った。

360度見渡す限りの白の地平を自分の思い通りに走れる。
誰もいない、何もない大地に佇んでいるとまるで世界のすべてが自分のもののように思えてきた。

来れてよかった。

再び笑いがこみ上げてきた。
まるでこの世界の王様になったような気分だ。
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遠くにうっすらと塩のホテルの影が見えてきたあたりでテントを張った。
しばらくすると遥か遠くにもとみ君らしき影も。
なんとか身振り手振りで呼び止める。
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夕暮れ時、食事の準備をする。
メニューは塩湖の塩を使った塩湖ラーメン。
これをやるのがずっと昔からの夢だった。

出汁と、しょうゆ、胡椒、ラー油でスープを作る。
塩が活きるようにあえて薄味で作った。

そこに塩湖の塩をかき集めて投入。

食す。

…うますぎる。
いや、シチュエーション抜きでこれはうまい。

隣で塩湖雑炊を作っていたモトミくんにも食べさせたが、
これは完全に塩湖ラーメンの勝利だと思う。

忘れられない味がまた一つ出来た。
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塩も採集。
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そのあとは各々ひたすら撮影タイム。
刻一刻と表情を変える大地の色彩にずっと“ほあ~”とか“はぁー”とかマヌケな声しか出てこない二人だった。
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おまけ。

ウユニ塩湖と言えば、僕が長年勤めてきた会社に非常に縁がある場所で
ここで僕なりのオマージュということでこんな写真を撮ってみた。
ウユニ
元ネタが分かる方、どうでしょうか?
分からない方は、“無印”“ウユニ”でぐぐって見てください。
感想お待ちしております。

2012年11月18日日曜日

塩の白銀世界

世界が一瞬で拓けたような、変わったような不思議な感覚にその瞬間襲われた。

昨夜の野宿を経て、10時頃に塩湖付近の集落に到着した。
ここで最後の補給をし、いざ塩湖へ。

ただここからが今まででも史上最悪の悪路、とゆうか砂地帯だった。
完全にタイヤが砂に埋れて全く漕げない。
全身全霊を込めて押さないと進まないという状況だった。

そんな中、視線の先にはウユニ塩湖の白を捉えていた。
遠目から見てもはっきりとそこから塩湖が始まるその境界線が分かった。
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結局1時間半ほどかけて砂地帯を抜けていよいよその白の境界線が目の前へとやってきた。
手前にあるちょっとした丘を越えた瞬間、白の地平が強い衝撃と共に広がった。
数時間前から見えていて、心の準備はとっくに出来ていたはずなのに、
飛び込んできた白の景色は激しく僕の心を揺さぶった。
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これがウユニ塩湖…

まだ末端部分にも関わらずそこには異次元のような、この世のものとは思えない景色だった。
白の世界と言えばアメリカ・テキサスのホワイトサンズ国定公園が思い起こされるが、
あちらが白の砂丘に風が作り出す風紋が美しい白と影の世界なら、こちらはただ白があるのみ。
たった一つの色彩でつくられる世界はなんとも言えない美しさであった。
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ウユニ塩湖はもともと海底にあったこの土地に大昔の地殻変動で地上に隆起し、
さらに外に流れ出る河川を持たなかったために
海の塩分がそのまま残る形となってこの塩の大地を作り上げたとされる。
このウユニに限らず、この近辺には無数の塩湖が存在する。
取り分けこのウユニがツーリストの支持を得ている背景にははっきりとした雨季と乾季があり
雨季には湖面にそのまま空を映しだしたかのような鏡張りが見れる。
逆に乾季になればしっかりと地面がしまり、白の世界を作り出すのだ。

日本人バックパッカーの多くは雨季のウユニを目指すことが多い。
南米を周遊するバックパッカーの多くはウユニの雨季に合わせて南米入りするほど影響力を持っている。
しかし地面の緩い雨季には当然ながら自転車は走れない。
だからチャリダーは乾季のウユニを目指す。
この大地を走ることは自転車に乗りはじめた頃からの夢であった。
そこにいよいよやってきた。

感動もそこそこに走りだすべくペダルに足をかける。

ぐらっ。

バランスを崩して慌ててブレーキをかける。

あれっ、ウユニって色んなスピード記録が出るくらいフラットで走りやすいって聞いたんだけどな。

改めて自転車にまたがる。

ぐらぐらっ。

ってここ…

コルゲーションダート並に走りづらいじゃんかー!!

憧れのウユニ塩湖走行は感動に浸る暇さえないほどにガタガタの路面だった。
パキパキっとまるで氷の地面を歩いているかのように乾いた音が響く。
時速は10kmも出ていない。
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加えて景色が全く変わらない。
遠くにいくつか島が見えるが、いくらこいでもそれは陽炎のように遠くに揺らめいて見えるだけだ。
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それに塩湖北側は火山の影になるところも多いようで、ぬかるんだ路面も多く、
ズブズブとタイヤが沈んでいきあっという間に塩まみれになった。
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そのため一部鏡張りになったところもあったが、自転車走行中となるとこんなとこに水張るな!という気持ちのほうが勝る。
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憧れの大地走行も楽ではないな…
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そう思いつつ5時間ほど漕いで、適当な場所にテントを張った。
テントを張り終える頃にはすっかり夕暮れ。
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白の地平はピンクから紫と刻一刻と色味を変えやがて闇夜に沈んでいった。
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すると突然に地平の上空からぼぉっと星がまたたきだした。

まるで、映画のラピュタで飛行石に鉱山の石たちが共鳴してキラキラと光り出したあのシーンのように。

あたりはすっかり星に囲まれた。
信じられないくらい星がきらめいている。
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3000mを越える土地なので夜の寒さもかなりのものになるが
そんなことも忘れてしまうぐらい、僕は夜空に心奪われていた。
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憧れの大地に僕はやってきた。
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秘技・分身の術
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