カファジャテからは時代に取り残された旧街道ルタ40をひた走った。
ボリビア国境から本土南端リオ・ガジェゴスまで南北にアルゼンチンを貫くこの道は、未舗装の区間もある。
だが、いまでこそ高速道路に主役を譲ったものの、未だ現役だ。
北部ルタ40は乾いた大地を真っ直ぐ地平に向かって延び、
継ぎ接ぎだらけの路面から、往時の賑やかさがかすかに感じられる。
そして突如として現れる木漏れ日の優しい森の中に人々は暮らしていた。
街のメイン・ストリートにもなっているルタ40を走っていると、
どこからともなく、オラ!と声が掛かる。
昔からたくさんの旅人を受け入れてきたのだろう。
人の眼差しも、街の雰囲気も外から来た人間を優しく迎えてくれた。
ひとたび、郊外に出れば再び、褐色の世界が始まる。
向こうから、ドドドッと大地を鳴らしたバイカーがやってきた。
挨拶の言葉こそ無いが、すれ違いざま親指を立てる。
この一瞬の瞬きに、僕らは互いの旅への安全とエールを交換する。
ただそれだけで僕らは仲間になれた。
地面を鳴らすうねりが遠くに消える頃、からだの熱を心地よく冷やす一陣の風が。
それに合わせてロードサイドの草花もそよぐ。
顔をあげた視線の先は、陽炎でゆらゆらと道路が揺らめいて見える。
まだ僅かに冷えているコーラを飲み干して、自転車はその陽炎へと向かっていった。
懐かしい感覚だった。けれど、この感覚の出処ははっきりと記憶があった。
それは、かつて走ったアメリカのルート66。
こちらも今でこそ懐古主義者の遺物とも言える時代遅れの道路だ。
でも、そこには旅人を受け入れる優しさを包有する道だった。
ルタ40を走っていると、無我夢中で走ったかつてのルート66の記憶がを鮮明に蘇る。
あっちがHeart of America ならこっちはCorazón de Argentinaですな。
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