2012年1月7日土曜日

戻ってくる

つーか皆様そろそろ僕がアグアスに戻ってきた理由お忘れじゃないでしょうか?

遊んでるだけじゃないんすよ?

ただ居候してタダ飯食ってるわけじゃないんですよ?

何って…

映画っすよ、映画。

映画に出るから戻ってきたんすよ。

ってことでようやく本編・映画撮影編行ってみましょう~!


監督のヘクターから延期になっていた撮影の再開の知らせが届いたときにはもうすでに
アグアスに戻ってきて2週間が過ぎていた。
当初の予定では、今頃既に撮影を終えてシティに帰っていることだ。

その間、浅草に来るお客さんには“騙されたんじゃないの?”とか“メキシコだからいつになるか分かんないよ”とか
ひどい言われようだった。
撮影がなければ、タダ飯を食らうただの居候だ。
まぁこれでようやく胸を張って居候できる。
いや居候自体あまり威張れたものじゃないが。

撮影が決まったといってもいざ現場に着くまで安心は出来ない。
ここはメキシコだからな。

約束の日、約束の時間になり待ち合わせ場所であるヘクターの家に向かい、チャイムを鳴らすと彼の親父が出てきた。

“ヘクターはお昼に出てったよ、今日は夜になんないと帰ってこないよ”

予想通り過ぎるぜメキシコよ!

幸いにも親父が撮影場所を知っていたので住所を教えてもらいそこに向かう。
その住所に着くとそこは至って普通の家。
チャイムを鳴らしてみるとおばちゃんが出てきて、“ヘクターは?”と尋ねても誰よそれ?ってかんじでこの場所も違うようだ。
蛙の子は蛙。
メキシコ人の親はやはりメキシコ人のようだ。

ってか俺、いなくていいの?
出るんじゃないの??
帰っちゃうよ???
と9割くらい思っていたが、このままおめおめ帰ったら本当にタダ飯喰らいになってしまう。
残り1割だけの僕の見栄がもう少し探してみようという気持ちを残してくれて、辺りをウロウロとそれらしき建物がないか探しまわった。

すると
“アツシ!”
と声が聞こえ、その方向を見るとそこにはヘクターがいた。

“元気かい?シティはどうだった??いま、撮影の準備してるところだよ”

彼は特に侘びをいれるでもなく、普通に声をかけてくる。
準備はいいけどさぁ、時間も場所も合ってなくて俺帰るとこだったんだけどなぁ。。。

そこでは彼の撮影チームの仲間たちがセットを作成していた。
僕は学生の時にとある映画スタジオや美術会社でアルバイトしていたことがあったので少し懐かしい光景だ。
その百倍しょぼい感は否めないが。
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しばらくそれを見ていると、日本人のような顔立ちをした男の子がやってきた。
その彼をヘクターに紹介される。
彼はシンジ。今回の映画の主演だ。
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親も生まれも日本だけど2歳からこちらで暮らしているから日本語はあまり話せない。
しか、実は今回の映画の設定は近未来の日本という設定で、彼のセリフは日本語だ。
片言の日本語では様にならないので、アツシが自分の所の練習をしつつ彼の日本語トレーニングをしてくれとのことだった。

とここで初めて台本が渡される。
台本のセリフは日本語に訳されていていた(シンジのお母さんが訳してくれたらしい)
僕の出番は明日以降だから練習の時間はあるけど、シンジの出番はもうこの後のようだった。
それをこの期に及んでトレーニングとか、意味あるのかいなー。

と思いつつ練習。

練習。

練習。

ふぅ休憩。



練習。

練習。





…本番が始まらねぇ。

時刻はもう夜11時を過ぎていた。
ってかもう遅くて浅草帰れないし!

深夜12時頃、セット・カメラ・照明の準備が整いようやく本番開始。
アクションに関しては監督のヘクターが細かく注文を付けていたがセリフについては
彼も日本語が分からないので僕がOKか否か判断をしていた。
なんかこんなんでいいのだろうか…
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結局この日の撮影が終わったのは午前3時。
幸いにも次の日は12時からと寝る時間はあったものの、肝心の浅草に帰れないので深夜にホテル探しで街を徘徊。。
たった数時間のために高いホテルに泊まりたくはなかったので、何件も回ってようやく180ペソのホテルを発見し即・就寝。

まさかここに連日連夜通うことになるとはこの時は知る由もなかった…

翌朝、一度浅草に戻って着替えと朝ご飯を食べてヘクターの家へ。

今回はちゃんと家に居てくれた。
と思ったら今度は始まらねぇ。
みんな平気で遅れてくるし、全員集まったのは1時間後。
そしてそこから始まるランチタイム…
こんなことならもう少し寝させてくれよ…

この日は近くの家を借りての撮影だった。
この日も撮影は深夜まで及んだ。
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ここでの僕ら撮影チームはこの家を荒らしに荒らしまくった。
それは強者が弱者を蹂躙するがごとく、まじで好き勝手に家を荒らしぶっ散らかしている。
撮影のためには仕方が無いとはいえ借り物とゆーのまるでおかまいなし。
家の主も顔がピクピクと引き攣っていた。
呆れてものが言えないという状況はまさしくこのことをいうのだろう。
一応撤退の時に片付けや配置を元に戻すが、その戻し方もてんで適当。
恐るべしメキシコ。

そんな恐怖のチーム・ヘクターにおいて唯一の良心といえるのが僕をこの撮影に引き込んだ張本人のリノである。
彼はよく周りに気がつくし、気が利く。
みんなが散らかしたゴミをこまめに片付けるし、僕が少し退屈そうにしてると声を掛けてくれる。
あぁメキシコにもまともな感覚をもったやつがいるよーと感動さえ覚えてしまう。
そして長身のイケメンでありながら、喋り方はどこかとぼけていて気の抜けた感じに話す。
このギャップがやられてしまう女子も多数でリノにはローラというとびきりキュートな彼女がいて
これがまた本当にお似合いなんだ。
ちきしょう、羨ましいぜ。
リノ、お前はどこまでナイスガイなんだよ!
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…と思ったのもつかの間。

翌日の撮影は同じ家での撮影のため現場直行ということで行ってみると、集合時間にはやはり誰も来ない。
頼りのリノも来ない。
僕と家主と30分待ちぼうけをしたところでぞろぞろとみんなやってきた。

そしてこの日の撮影は、別れを告げられた主人公が彼女を呼び止めるシーンがあったのだが
強い口調で彼女を呼び止める言い回しにシンジが苦戦していた。
そこで僕がふざけてシンジのセリフを横から叫んでみたら、それがヘクターのお眼鏡にかなったらしく
急遽主人公の声の吹き替えもやることになってしまった。
うーむ、臨機応変と言うんだか、適当というんだか…

で、肝心の僕の役どころはまだ撮っていないので、セリフの量を考えて主人公を地声、僕の役を少し声色を変えて
演じることにした。
これでも日本にいた頃は、“似てないけど誰だかは分かるモノマネ”とか“悪意のこもったモノマネ”を得意にしていた身だ。
けっこう声色変えるのは自信があった。
試しにやってみると、これまたヘクターに気に入ってもらえたのでこれでいくことになった。

ちなみに下の写真のようなピンクなシーンもあって、吐息とかも吹き替えるのかなと思ったが、これはシンジの地声でいくそうだ笑
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ある日は湖で撮影。
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連日連夜深夜まで頑張ります。ってかホテルとかレストランを借りるのに深夜じゃないと借りれなかった。
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こんなかんじで映像を撮ってました。

撮り終えたら当然…
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打ち上げ。
まぁこんなこと撮影中毎日やってたような気もするけど…

映像を撮り終えたといっても僕にはまだ吹き替えの録音が残っていた。
レコーディング中。
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シンジの口の動きに合わせてセリフを言わなければいけないから結構難しい。
で…
今度こそ終了~。
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四日間って聞いていたのに蓋をあけてみれば2週間ほどかかっていた。。
楽しかったけど、振り回されまくった2週間だったよ。

で肝心の僕の役どころですが…

【時は近未来の日本。
若き科学者アユム(シンジ)は長年の研究の末、
姿・形・記憶までも完全に再現するクローン技術の完成を目の前にしていた。
彼女のシボネを顧みずに研究に捧げてきた彼は、ある日シボネに振られてしまう。
シボネを諦め切れないアユムは、カズオ(僕)の忠告を無視し
自身の技術を駆使してもう一人のシボネを再生しようとするが…】

とゆうストーリーです。
僕は主人公の友人役。
ちなみに僕もスペイン語よく分からないため、最終的な結末はよく分かりません(笑)
オープニングだけ出来たたので見せてもらったらCGを使ったりして割と本格的な感じでした。

完成は今春とのこと。
さてどんな映画になることやら…
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2012年1月6日金曜日

Side Trip In Guadalajara

またまたサイドトリップ。
本日はメキシコ第2の都市であるグアダラハラへ。
実はこの間のテキーラ村もこのグアダラハラを経由しないといけないのだが
前回は時間がなくグアダラハラは通過するだけだった。

浅草で知り合ったリサちゃんがこの街に住んでいて案内してくれるということなので遊びに行ってきた。

今回はバスで移動。信頼のPrimera Plus社。
グアダラハラまで約3時間の道程。
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先週テキーラ村へ行った時の道を再び通る。一眠りしていたらあっという間に到着。

20分ほどバスが遅れ、約束の時間に遅れそうだったのでセントロまではタクシーで移動した。
グアダラハラでは先週まで南北アメリカ版のオリンピックであるパンアメリカン大会が開かれていて
その名残が今も街中にちらほらと見られた。

セントロのカテドラルで無事リサちゃんと合流。
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ここハリスコ州の郷土料理であるポソーレが美味しいレストランへ。
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メインの写真は食うのに夢中で撮り忘れてしまった。
豚肉とトウモロコシが入ったスープは食べ応えがあった。

レストランでお腹を満たした後は、僕のリクエストで州庁舎へ。
入り口には小銃を抱えた警備員が何人もいて物々しい雰囲気だったが、りさちゃんがスペイン語で話してくれたおかげで入れた。
たぶん僕一人だったら、ビビってそそくさと退散していたと思う。

この州庁舎に来た目的はこちら。
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オロスコ作「立ち上がる僧侶イダルゴ」

メキシコでは壁画運動というのが20世紀前半に起こり、メキシコの歴史やメキシコ人としてのアイデンティティを
大衆に伝えるために、文字の読めない人でも理解することの出来る、誰のものでもない壁画という媒体を用いた運動である。
壁画画家の中でも、ディエゴ・リベラ、シケイロス、そしてこの州庁舎の壁画を描いたオロスコが三大巨匠と呼ばれている。

このイダルゴが描かれた壁画だが、本当に迫力があった。
驚いたのは、この壁画、平面に描かれたものではなくて、球体状のカーブがかかった壁に描かれていたこと。
斜め上から描かれたイダルゴは、今にも飛び出してきそうな雰囲気で力強く君臨していた。

ここの議会室にも壁画があってこちらは天井にまたがって描かれていた。
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州庁舎のお次は、メルカドのリベルタ市場を散策。
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かなり巨大な市場で、民芸品や食料品がびっしり。
皮のニオイやチリのニオイ色んなものが混ざり合って市場は独特のニオイで溢れていた。
いや臭いといったほうが正しいか。

そしてカバーニャス救貧院へ。
こちらは貧困に苦しむ孤児や老人を収容していた施設でまたもや世界遺産。
救貧院としての機能は1980年に停止しており、現在は絵画などの芸術作品を展示する施設となっている。
ここの最大の目玉は、礼拝堂の天井に描かれたオロスコ作『炎の人』
残念ながらカメラが有料だったので写真は撮っていない。
オロスコの最高傑作と呼ばれるこの作品だが、個人的には州庁舎のイダルゴ神父の絵の方が好みかな。

救済院の前で。
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僕が座っている椅子もそうだが、この救済院の前には変テコな椅子が沢山並んでいて意外にも救済院より楽しめた。

こんなん。
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ケツもしっかり作り込むこのディティールへのこだわり。
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ずらーり。
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こういうのは単純でわかりやすくていいな。
もしかすると、何か深いメッセージがあるのかもしれないけど。

その後はカフェで小休止でおしゃべり。
りさちゃんは僕と同年代なので、僕も気負うことなく楽しい時間を過ごせた。
でも女の子一人でメキシコで暮らすってすごい。

楽しい時間はあっという間に過ぎていき、僕の帰りのバスも近づいてきた。

大満足のグアダラハラ観光。
りさちゃんありがとうございました。

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ちなみに帰りのバスは一等バスより上級であるDXバスのETN社を利用した。
座面の倒れる角度がさらに深くなって激快適だった。

アグアスに戻ったときにバス停の一角にあった、キリスト像。
旅の無事を祈る道祖神みたいなものなのかな。
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