2012年9月29日土曜日

虫の居所

一夜明け。
昨日はひたすら睡眠に費やしたおかげでなんとか体調は回復。
食欲も復活して朝ご飯を併設のレストランでとって出発。

昨日の峠以降続いた下りは本日も続き。
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何度見ても走っても、驚いてしまうつづら折れ。

標高が下がって気温も暑いくらい。

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で、着きました。
川底。
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ここで川に降りれそうなところがあったので、少し下りてみる。

釣りざおを出して釣りの真似事なんかをしたり、商店で買ったマンゴーを川で冷やして食べる。
これが美味かった!!

ここでキャンプも有りじゃん!?なんてモトミくんと話が盛り上がったがすぐさま前言撤回。

理由はこいつ。
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おっと、違った。

こいつです。
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吸血バエである。

気温が高くて川沿いのこの辺には血を吸うコバエが大量発生していた。
ちょっと目を離すとおびただしい数のハエがまとわりつく。

僕は長袖、タイツで肌を晒していないのにも関わらず、すき間を縫ってブスブスと刺された。
これがまた痒くて。。
(結局刺されたところは2週間ほどかゆみがきえなかった)
こんなところでキャンプしたら顔中、体中ボコボコになってしまうと、退散。

当初の予定通り、リマタンボまで。

川底から先は所々舗装が剥がれ、通りゆくバスが凄まじい砂煙をあげて走りづらかった。
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2012年9月27日木曜日

遠いクスコ

朝起きると空はどんよりとした曇り空。
どこからどう見ても、時期に雨が降り出す気配が漂っていた。

しかし、クスコまであと2日~3日の距離。
もう目と鼻の先だ。

クスコに着けば美味い飯に快適な宿が待っている。
ここでくすぶっているわけには行かない。

先に出発したカナディアンにつられるように僕らも出発。
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アバンカイは山岳にある街。
次の街まで、一昨日からひたすら下ってきた標高を再び登り直す。

これが相当にしんどかった。
これまでの道より若干傾斜がきつくなった気がするし、
なによりクスコまでのこり200km程に迫り、アンデスの過疎地帯を抜けたことで
気持ちはすでにウイニングランだった。

なのにこの山岳。
どうなっちゃってるの??

グネグネグネグネと道はうねり返すばかりで、一向にアバンカイの街が視界から外れない。
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午前中をかけて登り切った!
と思ったら山の上に大きな台地が広がっていて、ここがまたしんどかった。
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さらに一時間走り、ようやく下りへ。
ここでついに雨が。
何度峠で雨に降られれば気が済むのだろう…
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ここから街まではほぼ下り一辺倒のはずなのでこのまま押し切ったる!!

と思ったらここでパンク。。

ちょうど、商店の脇に使われていない椅子とテーブルがあったのでそこで修理。
修理を終える頃には雨も止んでいたのだが、体を冷やしたのか悪寒を感じ始めた。

ちょっとまずいなと思いつつも体を休めれるところは次の街までないので雨に振られていたときよりも重装備で出発。

しばらく下るとクラワシの街が見えた。
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がこちらも上りと同じく、長かった。
あそこの標高まで600m以上下らなければならないので、目の前に見えているのに一向に近くならない。

下りで力を使わないのが唯一の救い。

やっとの思いで着いたクラワシは…
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標識が家に突き刺さっていた。。

ヘロヘロになりながら宿を見つけチェックイン。
モトミくんも僕と同様に体調に異変をきたしたようだ。

お互い自転車を部屋に運び入れる気力もなく、最低限のものだけ持って部屋でダウン。

距離も気温もこれまでに比べれば全く大したことないのに、気が緩んだ途端にこの有り様。
いやはや、クスコへの道のりは最後まで甘くないのだった。

気絶するようにベッドに倒れ込んだ夜は、何かを食べる力も残っておらず、
なんとかワンタンスープを食べるのが精一杯だった。

2012年9月25日火曜日

すべての道はクスコへ通ず! サイクリスト集結

チャルワンカに着いても疲労感は全くなく。

いったい僕の体に何が起きているというのか。
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次の街はアバンカイ。

リマからクスコへ向かうもう一つの道のアヤクーチョ方面との合流地点になっているのでそこそこ大きい街。
とゆうかナスカ~クスコ間で一番大きな街である。

距離にして約120km。

しかしその内の100kmが下り坂である。

アバンカイまで着けば、クスコも目の前に見えてくる。
それに前日、先行しているモトミくんがアバンカイに滞在していると連絡をもらっていたのでそれを励みに出発。
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傾斜は極めてゆるい下りで一見すると平地?と見間違うほどであったが、ひとたびペダルを踏むと軽々と25km程のスピードが出た。
ここは間違いなく下りだ。
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アンデス越えのボーナスステージは徐々に広がる川幅とともに颯爽とした風を引き連れて。
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あっという間に100kmを下りきった。
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下りきった先のガソリンスタンドに休憩によると、サイクリスト2人の姿が見えた。
オラ!挨拶を交わし、少し立ち話。
教師をしているというカナディアンの夫婦は以前も南米を走ったことがあるそうだが、その時ペルーだけは雨季で走れなかったそうだ。
今回はリマからラパスまでの旅程で、ナスカから来た僕とは違ってもう一方のアヤクーチョ方面から来たそう。

マチュピチュで会おう!と二人にサヨナラをし、アバンカイへ向かう登りの手前でレストランに入った。
とここでも自転車が。

今度はブラジル人サイクリストだった。

彼は僕らとは違って逆走ルート。
ブラジルからアラスカを目指すそうだ。

かなりの軽装備でかなり早そう。
聞けばブラジルからここまで1ヶ月で来たそうだ。。。

このブラジル人のブルーノと一緒に食事をとる。

逆走ルートなのでお互いのルート情報を交換する。
ちなみにブルーノは地図も持っておらず、ここから100km以上ずっと上りだよって教えたら顔がひきつっていたのであった。
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ブルーノと別れた後はアバンカイへと続く最後の登り坂。
傾斜自体は緩やかだったが、この辺りの標高は1700mほどまで落ちてきていた。
日差しと気温が暑い。
昨日との気温差は40度近い。

とここで道脇の民家で談笑していたオバチャンたちが僕に気付いて、激しく手招きしてきた。
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その様子に『んん?』と怪訝な印象を持ったが、ちょっとおもしろそうと思い寄ってみる。
するとおばさんの一人が家に猛ダッシュで戻り、コップに並々注がれた謎の飲み物を持ってきた。

『暑いでしょ。飲みなさい!』

普通であれば有難いご好意だが、手渡されたコップに注がれた液体は一見すると泥水のよう。
いやまぁ何かの果実を絞ったジュースなのは分かるのだが、明らかにそれは清涼感とは無縁の濃厚さを見ただけで感じ取れた。

しかしなぁ。。

おばちゃんたちは興味津々に僕がこの飲み物を飲む瞬間を見ようとしている。

おりゃ!!

覚悟を決めて一口。

オェぇ~、予想通りの濃厚さ、そして風味…

申し訳ないがこれ以上は飲めなかった。

ただ、残すのは申し訳なかったので手元にあったコーラで口直しをしつつ、そのコーラの入ったペットボトルにそのジュースを入れた。

『ありがとう、これは後で飲むことにするよ』

そう言って何とかその場を凌いだものの、コーラをここで飲みきってしまったため
ここからアバンカイまで、手持ちの飲み物はこの泥水しかなくなってしまった…。

続く暑さと登り。
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どんなに喉が乾こうがちょっとこの泥水は飲むことが出来なかった。
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アバンカイは谷底から600m程登ったところにあり斜面にそって市街地が形成されていた。
その日が日曜日だったからかは分からないが、商店が全くといっていいほどやっておらず
街道沿いには自動車関連のお店が軒を連ねていたが、どうにも活気がなく不気味に荒くれていた。
そして、アバンカイの看板を過ぎてから中心地までも地味に遠く、30分以上かかった。

セントロ近くにモトミくんが滞在しているという宿を見つけ、フロントに部屋番号を確認して部屋を訪ねる。
リマ以来約ひと月ぶりの再会となった。

そのまま彼と、どこの坂道がキツかったとか、あそこで休憩した?とかこのアンデス越えの話に花が咲く。
気がつけば一時間近く立ち話をしていた。

そうしていると、谷底で出会ったカナディアンも僕らのホテルに入ってきた。

このインペリアルホテル、値段も手頃でネット付き、そして何よりチャリダーに優しいガレージ付きのモーテルタイプの宿だった。
自転車の出し入れが楽なのでこの手の宿は有難い。
やっぱりチャリダーの宿選びというのは国籍問わず同じになるのだ。

おまけに夕食に向かった、ちょっと離れた中華レストランでも彼らにばったり。
安い・多い・ウマイを満たした中華は自転車乗りの味方である。

夜、宿に戻って部屋の前でモトミくんと談笑していると、隣の部屋の窓からおばあさんが顔をのぞかせた。
『ちょっとうるさかったかな?』と思いつつもまだ8時前。
そう思っていると、その息子と思われる人が出てきて
『子供たちが寝る時間だから静かにしてほしい』といってきた。
話し方からするにおそらくフランス人。
“子供たちが寝る時間”とかこつけてはいたが、あばあさんが、部屋の前にいるアジア人に対してあまりいい気を持っていないから言ってきたのは明らかだった。
だいたい子供たちのはしゃぐ声が聞こえてくる。
まぁ仕方ないので声の聞こえない2階の通路へ移動。

足元の部屋ではカナディアンの二人がお茶でも作るのか、部屋の前でガソリンストーブを焚いていた。
そのストーブの近くにフランス人家族の車があった。

『私の家の車の側で何やってんのよ!』とカナディアンの様子を伺いに行くおばあさんの姿が見えた。

『もうなんでこのホテルには変な自転車乗りがこんなにいるわけなのよ!!』
そんなヒステリックなおばあさんの叫び声が聞こえてきそうな夜だった。

2012年9月23日日曜日

雪原の先の別世界

夜明け前。
足元から伝わってくる若干の冷気で目が覚めた。

テントの生地はバキバキに凍った氷が張っている。
昨日の夜、テント内で炊いたろうそくと僕の呼気などから発生した結露が夜の冷え込みで凍ったものだった。

恐る恐るジッパーを明け外へ。
雪は積もっていなかった。
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よかった。
これなら走れる。

ただ、このテントについた氷、日中に溶けてしまうだろうから今日のキャンプはちょっと厳しそう。

外に出しておいた自転車には霜が降り、ボトルゲージに刺さったままの水は斜めになった状態で凍っていた。
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なんとか今日中に次の街チャルワンカに到達できるようにと、まだ昨夜の冷気の余韻が残る7時にネグロマヨを出発。
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出発早々、指先の感覚がなくなる。間もなく足先も同様に。

寒い。

慌ててオーバーグローブと厚手の靴下を履く。

若干ましになったものの、もう外気温が上がらないと問題解決にならないほど寒い。

カハマルカ、ワラス、ここと本当に僕のペルーの4000mを越える高地での相性は最悪だ。
降水、降雪確率100%なんて。
本当に今は乾季なのだろうか?

ただし、アルティプラノの果てまで広がる白と茶の斑世界は、これまでのアンデスとは違った趣で
雪が降った日のあの独特のシンとした空気感と一緒に思わず足を止めてしまう美しさであった。
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遠くでアルパカ放牧をする農夫の姿が見えた。
畜舎から放たれた大量のアルパカはゆうに100頭を超えていた。
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電気もないこの地で彼とアルパカたちはどんな夜を昨日過ごしたのだろう?
そんなことを考えながら自転車を進めた。
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やがて道は高原の端へ。
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ここで一気に高度を下げて谷底にあるパンパマルカの村に着いた。
ちょっとしたホステルもあるそこそこの村だったが、時刻はまだ午前中なのでそのまま素通り。
村の街道沿いには村人がめいめいペルー国旗を持って歩いていた。
そういえば今日はペルーの独立記念日だったなと想い出す。

村を抜けると、再び登りに転じ、見たところさっきと同じような標高まで登るようだったが
ここでどういうわけか急に自転車に力が入らなくなった。
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その場に自転車を投げ出し、マッシュポテトを作って食べる。

これで多少マシになってなんとか登り再開。
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2時間ほどかかって頂上に着いた。

そこから見える景色もスケールが大きく、息を飲む景色でこの達成感とともに写真に収めようとした瞬間、
巨大な犬が2匹、弾丸のように岩陰から飛び出してきた。

ま、ま、まじ?!

と慌てて逃げる。

頂上に出て一度気が緩んだため、自転車がめちゃくちゃ重い。
そんなことは構わず、犬は僕の両サイドでガウガウと吠えていた。

どうもこのあたりは犬が多い。
それでいて大きく凶暴だ。
一体どうなってんだ?

道自体はゆるやかな下り基調なのに、こいつらのおかげで楽しめない。

ヘロヘロになった道だった。
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この頃になると幾つか小さな集落が点在するようになる。
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発電所のような施設を越えた先にはつづら折れの下り!
谷の切れ間に沿って遥か先まで道が続いているのが見える。
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事前の情報によるとここから150km程ひたすら下るらしい。

100kmの登りに150kmの下り…
本当にアンデスのスケール感は日本では感じることの出来ない規模だ。

自転車は10km、20km、30km、40km…とぐいぐいと加速。
つづら折れの道なのでスピードは押さえ気味にしないと危険だ。

せっかく自分で上ってきた道なのに、ブレーキをかけながら下らないといけないのが少し悔しい。

何度折り返したか分からない程のつづら折れを終えて川沿いの道にやってきた。
振り返るととてつもない大きさの壁が。
壁の途中から、トラックが煙をわんわんと吹き上げながらのろのろと道を登って行くのが見える。
あんなところから下ってきたのか…。

ここからの道は川沿い。
傾斜も緩くなるので、思い切り踏める。

時速30km超のスピードで自転車は行く。
両サイドにそそり立つ茶色の壁。
気温もこの頃になるとだいぶマイルドになった。
景色も気候も僅か数時間で別世界に来たような気分だ。
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川沿いの道はそのままチャルワンカへと続き。
チャルワンカの街は川沿いにメインストリートが続く小さな宿場街。

宿のホットシャワーを浴びながら一日を回想する。
回想すればするほど、あの雪原を走ってきたことへの実感がなくなっていくような。
そんなふうに思ってしまうほど、ここは穏やかな空気が流れていた。
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