2013年2月13日水曜日

チリのアグアスカリエンテス

プコンにはビジャリカ火山とビジャリカ湖をはじめとした、数多くの山と湖に囲まれた場所で
登山やラフティング、トレッキングに乗馬とあらゆる種類のアウトドアアクティビティを行うことが出来る
チリ最大のアウトドアリゾートである。
湖水地方とも呼ばれるこのエリアはチリ人自慢の観光地。
街のメインストリートにはシャレー風のホテルやストアが並びいかにもツーリスティック。
同じチリにあってサンティアゴやアタカマともまるで違う雰囲気の街だった。

そして、あちこちに出された看板からはPATAGONIAの文字が。
そう、もうここは南位40°以南のパタゴニアに地方なのだ。
そうはいってもまだ荒涼とした地平の果てまで続く大地も
気を抜いたらすべてをかっさらっていきそうな強風もここには無い。
一口にパタゴニアといっても南北で2000km近い広大な土地。
このあたりはむしろ、西風が運ぶ雲がアンデスにぶつかり雨がよく降る豊かな土壌が広がっている。
だからせっかく憧れの地に入ったといってもまだ実感は無い。

それでもこのパタゴニアを満喫すべく、まずは火山の恵み温泉へと出かけた。
ボリビア以来の温泉だったのでかなり楽しみ。
温泉は近郊にいくつかあるのだが、色々情報を集めて、
もっとも湯温が高いとされる温泉の夜風呂ツアーなるものがあったのでそれを申し込んだ。
夜、ツアーバスに揺られ1時間。
着いた温泉は、海外にしてはなかなか風情のある岩作りの温泉でいくつか湯船が隣を流れる沢に並行してあった。
暖色系の柔らかな灯りが一層雰囲気を盛り上げる。

ほうほう、これは、なかなかどうして…

一目見てかなり期待が高まったのだが、同時に違和感にも気づいた。

あれ?湯気が…出てない…??

既に闇夜もだいぶ深まり、寒さもすぐそこまでやってきていた。
にも関わらず、湯面をみてみると、湯気がほとんど立っていないのだ。

んな、ばかな!

おそるおそる手をつけてみる。

ぬるっ!
ってゆーか冷たくね?

湯温はお世辞にも温かいとは言えず、お世辞を言ったとしてもぬるいぐらい。
つまり冷たかった。

それでも期待していた温泉に裏切られた事実を認めたくない一心で
外が寒いだけで、この湯温はなんとか入れる温かさなんじゃないか?と必死に思い込むことに。

いくつかあった温泉の中で、一番マシそうな湯船に目星をつけて、意を決して入泉。
入る分には入れたが、肩が出ると即座に風邪を引くレベルの温度。
かといってずっと入っていれば確実に体温は奪われていく。

しかも辺りは温泉と着替えの小屋しかない何もない所。
温泉ツアーなんてのは名ばかりで、ここまで連れてこられた後は、2時間半後にまたここ集合ねっていう放置プレイ。
あとの2時間ここで過ごさなければならないのだ。

なんだ、この罰ゲームは。

なんて思うも、なんとかこの状況を打破せねばならない。
ちなみにどのくらい寒いかと言うと、冬でもTシャツ一枚のあの白人たちもあがるときは肩をすすくめて震えるレベル。
太陽があれば、だいぶ違ったろうが、それにしても寒すぎる。。。

人がたくさん固まっているところが湯温高いところかなと思って行ってみる。
心なしか温かい気がしたが、気のせいのような気もする。

やむを得ず動きまわって体温を上げる。
疲れて5分で終了。

うむ、どうあがいても2時間半後には風邪を引いているだろう。
しかも明日は早朝からビジャリカ登山だってのに。

「ねぇ、ここ!ここ温かいよ!!」

向こうから声が聞こえる。
この温泉にはサンティアゴやイースター島で知り合った友人たちと5人で行っていたのだが、
みな温かい所を探すのに必死だ。

あちこちでそんな声が聞こえ、そっちの方に行ってみると全然温かくない。。。

だがしばらくして、そのうち誰かが、ついに源泉を探し当てた。
源泉は岩が積み上げられた壁のすき間から出ていた。
そこに手を入れてみると、たしかにここだけは確実に温かい。

ここかー!!

僕らは全員そこにおしくら饅頭のように集結して、岩のすき間に手を突っ込んだ。
そして手の先を上手くつかって源泉が自分のほうに流れるように掻きだした。

あったけ~。
温かいことがこんなにもありがたい事か。
これで今日も生き長らえることができそうだ。

僕らはその岩にそれぞれ両手を突っ込み、傍からみるとまるで、岩を抱きしめているかのようなポーズで2時間を過ごした。
それをこれが、ジャパニーズスタイルの温泉の入り方なのかと、ドン引きの顔で眺める白人たち。

いや、そういうわけじゃないんだけど、背に腹は変えられないんだ。

命がけの月見風呂ツアーお値段10000ペソ(20$)なり。

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