2013年2月21日木曜日

紙一重の差

サンティアゴからプコンに戻り、1日休んだあとプエルト・モンへ向けて出発した。
本当は、ここからアルゼンチンへ抜けてシエテ・ラゴスと呼ばれる7つの湖をめぐり
アルゼンチン側の観光地バリローチェを回ってからプエルト・モンへ抜けるコースの予定だった。
ところがプコンに戻った日から天気が崩れだし、あれほどくっきり見えていたビジャリカ山も雨雲にすっかり覆われた。
予報によると、これから本格的に崩れるらしい。
天気が悪いのではせっかくの湖をめぐるルートも楽しめないと思い、ルートを変更し最短ルートでプエルト・モンを目指した。
1日目は来た道を戻り、再び高速道路に復帰、またもやコペックにお世話になった。
しかし、2日目の午後には早速雨雲に捕まった。
オソルノというそこそこの都市の近くまで来ていた。
なので宿もあるのでここで雨宿りするべきか。
たがしかしあと100kmでプエルト・モンだ。
頑張れば今日中に着けないこともない。
どうせ濡れるなら一日で走りきってしまった方がいいのではないか?
そう思いつつ、大方気持ちは一気にプエルト・モンまで走ることに傾いていた。
雨音が響くレインウェアのフードの外からやけにサイレンの音が聞こえ
急にパトカーがたくさん僕を追い越していった。
なんだろうと思っていたら、すぐに分かった。
見通しの良い直線道路、
そこに一台の車が逆さになって潰れていた。
この道路でどう運転したらそうなるのか全く想像がつかないが派手な事故だったようだ。
周囲は警察によって交通規制されている。
だが、近くに停まっている救急車はランプが消えてただ止まっていた。
まさか。
そう思いながら事故現場を通り抜ける。
横目でチラリと現場に目をやると
タンカには人の影のような輪郭の盛り上がりがあり、その上には顔まで全身毛布がかけられていた。
この車の運転手だということは明らかだった。
急に腹の底から恐怖がこみ上げてきた。
この車は数十分前に僕を追い越していった車であり、タイミングが少しズレてたら、
あるいはさっき僕がガソリンスタンドで休憩していなかったら…

僕はさっきまでの気持ちは消え失せ、すぐにオソルノの街で宿を取った。

他人のフリ見て我が身を…
というにはあまりにも代償が大きすぎるが
僕も一歩判断を間違えばいつだってああなる可能性はあるのだ。
そしてまさに今日、その判断を誤りかけた。
この日はずっと恐怖心に支配されていた。
窓の外では雨脚が一層強まり、バタバタと屋根を叩いている。

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