チャイテンから40kmほど走り、大きな河にかかる橋を渡るといよいよ道は未舗装のダートとなった。
ボリビアやアルゼンチンの旧道を走り、それなりにダートには自信があったのだが、
いきなり出鼻をくじかれた。
拳2つ分以上の大きな石がゴロゴロとしていてかなり走りづらい。
雨で若干滑るのもあるのか、思うように乗ることが出来ない。
以前、チリの道路はアップダウンが激しい、傾斜が急ということを書いたと思うが、
チリの道路作りの下手さの本領は未舗装路でこそ発揮された。
ちょっと、
いやかなり大変だ。
途中、大掛かりな道路工事をしていたのでその影響でこんなに路面が悪いのだろうか。
これから先に少し不安がよぎる。
そして、登り坂が延々に続き終わる気配がない。
雨もやのせいで視界が効かないのもあって、こいつは精神的につらいぞ。
このカレテラアウストラルは、世界的にも自転車乗りが多いルートと聞いている。
だから、僕はてっきり、未舗装だけど走りやすく、左右に流れる美しい景色を
“はぁぁ~”とか“ほぉー”とかマヌケなため息をつきながら走れるお手軽コースだと思っていた。
だから、このへんの標高は調べていなかった。
というかボチリに入ってからアンデスも終わったと思って一切調べていなかった。
ところが、このとおりのアップダウン続きの悪路。
そして舗装路では問題にならなかった雨が走行を妨げる。
き、聞いていないんだがー!
終わりなき登り坂を、汗なのか雨なのか分からぬ謎の液体を全身から滴らせつつ、
以前にここを走り、ここを猛プッシュしてくれた夫婦チャリダーのようこ&ひろさんへの呪いの言葉をぶつぶつと唱えた。
(お二人へ。
僕のこのブログにはかなり誇大表現が含まれているので、本気にしないでください笑)
峠を越えると最初の村であるビジャ・サンタルシアに到着。
ここはアルゼンチンからカレテラアウストラルに入る別ルートの合流地点なので、
分岐のバス停には何人かのバックパッカーがヒッチハイクをしていた。
時刻は2時過ぎ。
お次の集落であるラフンタは70km先。この道路状況では今日中の到着はちょっと厳しそう。
雨が降ったりやんだりの状況でキャンプも気が進まなかったので、少し早いがこの村で宿をとることに。
翌日の朝。
久しぶりに感じる感覚で目が覚めた。
それは、窓から差し込む太陽の眩しさと熱だった。
昨日、もやに隠れて見えなかった山の稜線がくっきりと見え、自然と心が高揚してきた。
慌てて出発準備を整えて、街道へと飛び出した。
左右を険しいシルエットの山脈に挟まれ、その間に街道が伸びている。
およそ標高0mに近い場所とは思えぬ世界だ。
昨日たっぷりと雨を蓄えた森から勢い良く水が放出されている。
驚いたのは、この地域の色彩の鮮やかさだ。
太陽が差し込むと、背の高い木々は一本一本の輪郭を鮮明にし、
その影に隠れる木々たちはより緑を深めた。
脇を並走する河と、遠くに見える湖はエメラルドに、あるいはミルキーな色で輝いた。
河が喜ぶといった表現がこれほど的確に当てはまる場所は初めてかも知れない。
ボリビアの高地でも不思議な色の湖を見たが、ここはそれを上回る色彩の濃さだった。
例えばウユニ塩湖のような、この世に唯一無二といった世界観はここは持ち合わせていない。
むしろ、それと真逆な“有”の要素を徹底的に濃厚にした世界がここを形作っているように思える。
この景色を見て笑顔がこぼれない人なんていないのではないか。
この街道は“世界一美しい林道”なんて呼ばれていたりするそうだ。
まさにその片鱗を垣間見た。
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