2013年5月28日火曜日

放り出された根無し草

イグアスからクリチバを経由し、南米屈指の大都市サンパウロへ。
サンパウロは好況を謳歌するブラジル経済の中心都市。
これまで訪れた都市の中でもトップクラスに都市インフラが整っていた。
ただ雨季のこの時期は、毎日凄まじい雷雨が落ちた。
聞くところによると、サンパウロは世界でも雷の死者が多い都市なんだそうだ。
停電になることもしばしばで、そうなると整えられたインフラも台無しになる。
この街で数日過ごし、次なる目的地モロッコへの準備を整えた。
南米の出口グアルーニョス空港にはフライトの5時間前に到着した。
空港バスの出ているヘプブリカ広場までのタクシーの手配や、
到着してからのチェックインや両替など色々とやることがあるし、
ましてや自転車を預けるので色々とトラブルが起きたら、ということで早めに宿を出たのだが、
それは杞憂だったようであっけないくらいにスムーズに事は運び、
今ボーディングゲートでこの記事を書いている。

ただ一点だけ失敗が。
余ったレアルをドルに替えておこうと思い、空港併設の両替所に行った。
手持ちのレアルは公式レートだと24$くらいになりそうだったけれど、
空港ではレートが悪いし20$くらいになればいいかと思ってお金を差し出した。
愛想の悪い男がカタカタキーボードを弾き、数分後にお札が2枚返ってきた。
10$札2枚で予想通りかと思ったら、15$しかなかった。。。

レシートをよく見ると手数料で一律8.5$も取っているようだった。
たかだか8$と言うなかれ。
両替失敗した時のショックって自分にとって計り知れないくらいデカイ。
以前もグアテマラやチリの国境でも両替で大幅に損をして、しばらく気持ちが萎えたこともあった。
こう言っては本末転倒かもしれないがお金のやり取りだけで、損するって何も生まれないし本当にがっくりだ。
あ、そういえばブラジル入国でも失敗したな。
もしかすると自分は相当両替ベタなのかもしれない。。。

さて話はそれたが、いよいよ僕は南米を出発し新しい大陸に渡る。
パタゴニアを走っている時、この大陸を去るときはきっと寂しい気持ちになるのだろうなぁ
と思っていたのだが案外、すっきりした気持ちでこの空港にいる。

確かに、ウシュアイアに到達してもうひと月以上経つし、
南米のエンドロールって言うには長いくらいの距離をパラグアイで走った。
気持ちを整理して整えるにはもう十分すぎる期間だった。
もう視線はモロッコの方をしっかり見据えている。

ただ、まだ次の終着点がはっきりしない。

僕にとってウシュアイアは特別な響きをもつ場所だった。
位置的にも日本から最も遠い場所にあり、
そこから次の場所へ行くだけでもバスや飛行機を乗り継いでいかないといけない。
もちろんお金だってかなりかかってくる。

そこへ至る道はアンデスの険しい山々や古代文明のロマン、美しく優しいパタゴニアの地平など
旅の魅力がこれでもかと詰め込まれた道だった。

その道を少しずつ紡いでいくうちに、何かの物語のような出逢いが劇的に訪れ、
僕の琴線を刺激した。

この大陸はほとんどの国がスペイン語を公用語としている。
言葉が通じない中でのコミュニケーションも、それはそれで面白いのだけれど
言葉が通じあって、意思疎通のある旅の方がもっと面白いと思う。
最初はちんぷんかんぷんだったスペイン語も少しづつ覚え
ちょっとした会話ぐらいは出来るようになった。
ブラジルに入って、この一年半使い続けたGraciasの言葉が抜けなくってつい使ってしまっていた。
最後の方になってやっとオブリガードと言えるようになってきたのに、もうこの国を離れなくてはいけない。

これからはこんなに広い範囲をカバーする言語を話す土地を旅行することはないだろう。
その土地の言葉や作法が少し身につき始めた頃に、
その国を離れなくてはならない寂しさがつきまとうようになると思う。

長くなったが、言語的なところでも中南米は旅がしやすいし、よりその土地を知れるチャンスを秘めている。

ウシュアイアを目指した自転車乗りもたくさんいた。
無事、目的地へ到達した者、
あるいは何らかのアクシデントで断念せざるを得なかった者それぞれにいると思う。
会ったことがある人はもちろん、ない人たちとも、
過去未来、場所や言語、国などあらゆる属性を超えて
僕らは『ウシュアイア』という言葉で結びついた。
きっとそれを感じてるのは僕だけではないはずだ。

街自体はツーリスティックで何の情緒もない場所だったけれど、
ウシュアイアという響きは何時まで経っても色褪せない。
ウシュアイアは今もこれからも世界の果てに相応しい場所だ。

これから訪れる土地にも果てとか先っちょと呼ばれる場所はたくさんある。
喜望峰もそうだし、ロカ岬や、ノールカップ、マレー半島の先(あれはなんて場所だ?)などなど。
でも、どうも今の自分にとってそれらは特別な意味を持たない。

ずいぶん長いこと南米に憧れていたからかな。

次のモロッコという土地にかなりワクワクしているし、
南米を走りきった手応えもようやく少しはあるのだけれど、
僕の気持ちを落ち着ける終着点が見つからず、ずいぶんと宙ぶらりんな気持ちなのだ。
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