2012年5月7日月曜日

コロンビア最後の走行

パストの朝は肌寒いを通り越して寒い。
何せここは標高2500m。なので朝は気温が10度を下回る。
これだけ寒いのは久しぶりで、そのせいか体も慣れない。
何か、風邪をまたこじらせたかのような頭がボーッとした状態で目が覚めた。

パスト3日目の朝。昨日、一昨日とこれといった観光はしていない。
ぶらっと街へ出て、飯を食べたり、仕立屋にいって破れた短パンを直してもらったり
なくした鍵を買い直したりと特別なことはせずにゆっくり過ごした。

ひんやりした空気の中、毛布に包まって貪る惰眠は何よりも久しく、
加えて宿の居心地がよかったので気持ちとしては連泊したかったが、
あいにく手持ちのペソがもうギリギリしか残ってない。

仕方ない、国境へ向かいますか。

扉をあけてロビーに出ると天窓から今まで見たことないぐらいの青空が出ていた。

おぉー、今日は自転車日和だ!

あっという間に体に活力が戻ってきて、出発の準備。
この宿、好きだったなぁ。
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予め調べておいたルートですんなり郊外へ。
見て、この青空!
日本の冬の朝みたいにすぅーっと息を吸い込むと、ひんやりした空気が体に入ってきて清々しい。
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爽やかな朝のサイクリング。
と言いたいところだがそうは問屋が卸さない。
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ここパストは四方を山に囲まれており、街を脱出するには3100mの峠を越えなければならない。
標高差600m。
一昔の自分だったら相当な覚悟と気合を入れないと600mなんて登れなかったが
ここアンデス山脈では1000m、2000mUPなんて当たり前。
とゆうか、事前の調べでこの峠を超えた後、いったん下って再び1100mの上りがあるのが分かっていた。
なので600mなんて軽く一捻りしてやらなければ。

2時間後、楽に登頂。
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ここから一気に1400mを下る。
流石に標高が高いのでダウンヒルをすると汗をかいた体はあっという間に冷える。
少し早いが、途中のレストランで昼食。
スープを飲んで生き返る。
この辺は山の傾斜が緩いので、周辺の住民が山を耕作や家畜の放牧地にしており
パッチワークのような山並みがなんとも美しい。
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レストランの窓からもその山並みが見える。
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その後谷底へ向かい下る。
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谷底は恐ろしいくらい急峻な山々に囲まれていて、見上げるととてつもなく強大な壁がそそり立っているかのようだった。
そして、空の青と、水に恵まれたアンデスの緑のコントラストが美しく、息を飲む絶景だった。
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底にあった街はこの急な谷にあって驚くぐらい栄えていて
商店やホテルがいくつもあった。
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アンデスのボーナスステージはここで終了。
ここから、再び1100mの上り。
上りといっても川沿いに走るパンアメリカンはなかなか標高が上がらず
しばらく上っては下り、上っては下りを繰り返す。
自転車で上りと下りに使う筋肉は違う。
ずっと上りや平地だと同じ筋肉を使うので楽なのだが、
こういうアップダウンは使う筋肉を切り替えなければいけなく
切り替えの際に足に一番負荷がかかるのであまり好きではない。

うだうだと徐々に標高を上げる。
前回と違って、犬も少ない、もしくは大人しいので良かった。
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残り30kmを切ったところで、小さな商店が。
手持ちのペソを考えると、これが飲み物を買う最後の機会になりそう。
まだ先は長いので、少し重くなるが大きなボトルのコーラを買おうとした。

そうしたら、あいにくコーラは品切れで大きなボトルはPONYという飲み物しかなかった。
これは飲んだことがなかった。
まぁ最後だし、飲んでみるかと3500ペソおよそ2$を店主に手渡す。
現金の代わりに手に入れたボトルの蓋を回す。
“プシュ”っと清涼感のある音とともにそこから甘ったるいニオイが鼻についた。
その瞬間“しまった”と思った。
慌てて、ボトルをよく見るとそこには筆記体でmaltaとかかれていた。
このマルタ、英語で言えばモルト。つまり麦芽ジュース。
これこそ僕が世界で一番マズイ清涼飲料水と
思っている飲み物。
飲むと複雑な甘ったるさがいつまでも口の中に残る味で何より香りがどうしても受け付けない。
僕の口には合わないこの飲み物、中南米では意外と広く親しまれていて度々目にしていた。
よりによって、手持ちの少ないこんなときに、こんな大容量で買ってしまうなんて…。

喉が乾いている今なら、なんとか飲めるかなと思って口にしてみたが一口目でギブアップ。
やっぱこれは僕には飲めないわ。
大枚をはたいて買った飲み物なので、一応自転車に搭載して持ってみたが
やっぱり飲む気になれず、再び現れた商店のおじさんにそれをあげて、
晩飯代を減らす代わりにオレンジジュースを購入した。

そんな苦渋を舐めているといつの間にか峠付近。
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この頃になると、朝の青空はすっかり雲に隠れてしまい時折小雨がぱらついた。
市街地へ入る頃には街の奥に分厚い雲が。
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とここで街の入口の分岐で両手をあげて手を振っている人が見えた。
蛍光色のジャケットが目に入ったので警察の人が応援してくれているように見えた。
コロンビアの警察はこの手のベストをよく着ているのだ。
対面を通り過ぎてもめちゃくちゃ手を振っている。
やけに手をふっているなぁと思いつつ手を振り返して通り過ぎた。
ら、その男が追いかけてきた。
よく見たらサイクリストだった。

その男の人はアンドレと言うドイツ人でアラスカからウシュアイアまで走る予定だそうだ。
久々にサイクリストに会った。
聞けば、アラスカからここまで9ヶ月で走ってきたそうだ。
9ヶ月って早くないですか…
一ヶ月2000kmペースですよ。

彼はこの後近くの有名な教会に行くそうだ。
僕も行く予定なのだが、今日は体が冷えているし、今にも雨が本降りになりそうなので
明日の朝行くつもりだった。

なので彼とは“やっぱオルトリーブは最高だよね”とか自転車乗りならではの話を10分くらいして別れる。
別れ際の一言は
“See You On The Road!!”
かっこいいなぁ、この言葉。

さて、アンドレと別れた、最後の街イピアレスのセントロへ。
セントロまでの道にはコロンビア最大の傾斜が待ち構えていた。

全力で押す。

道が砂利のため、足を取られてなかなか進まない。

たかだか50m程度の道だったが、たぶん5分くらいかかったし
最後の最後で体力を使い果たした。
上からみると大したことなさそうだけど、実際すごいのよ、この傾斜。
ヤルマル超えしてます。
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目的の宿にチェックインして街をふらつく。
このイピアレスの街、予想以上に都会だった。
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街の中心には大きな教会が立ち、そこから同心円上に繁華街が広がる。
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街の一角にあったポヨ通り(鶏肉の意。命名自分)にはポヨ専門店が所狭しと並ぶ。
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ここで2000ペソ、日本円にして100円のお店へ。
スープに、チキン、ポテトがついて中々のボリューム。
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お腹は少し物足りないが、残金3000ペソ。
明日の朝ご飯代もあるので、ここは我慢。
チキンがコロンビア最後の晩餐となった。

思いの外、楽しかったコロンビア。特に人の良さはこれまでで一番だった。
名残惜しいけど明日はエクアドルだ!
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