2012年10月1日月曜日

終わらぬ登りは決してない クスコ到着

いよいよクスコまで約80kmというところまできた。
順調に行けば今日中に到達できる。

深い山に周囲を囲まれたリマタンボの朝は肌寒く。
朝7時になっても朝日は山に阻まれ一向に顔をのぞかせなかった。

でも、その山々を越えた先には憧れのクスコが。

よっしゃあ、行ってみますか。
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もはや日常茶飯事となってしまったペルーのつづら折れ。
すっかり体のリズムが山岳仕様になっているので、クスコに着くのは嬉しいけど、少しさみしいような。
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対岸に見えるビルカバンバ山脈。
その山脈の頂点にたつサルカンタイは残念ながら雲に阻まれ全容を捉えることが出来なかった。
そして、この向こうには天空都市マチュピチュが。
否が応にも期待は高まってくる。
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いつものペースならクスコに着くのは夕方くらいかなと予定を立てていたのだが、
クスコを目前にした僕らの鼻息は荒く、坂道を物ともせず、最後の峠を午前中に突破することができた。
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峠を越えると、ここがアンデスの高地ということを忘れてしまうような牧歌的な平地を数十km走った。
少しづつ、通過する集落が街らしい密度を持ち始める。

マチュピチュ行きの列車の発着駅ポロイの先にある一山を越えるとそれは見えてきた。

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クスコー!!



ってあれ?
なんかしょぼくないですか??

ここがクスコの末端に当たる部分なので、都会的な街並みがあるわけないのは明白である。
なのにこれだけ長いこと田舎を走っていると、どうしてもクスコへの期待感は膨らみに膨らみ過剰な大きさになってしまっていた。

なぜか僕はこのクスコの看板を越えた瞬間、大都市的街並みが広がっていると一方的に思い込んでいた。

だから、この看板を見た時の落胆っぷりは相当なものだった。

感動のクスコはそこにはなく。

しかもゲートを越えても上り坂が続いていた。

2kmほど先の登りの終わるあたりで遅れてやってきたモトミくんと話す。

『なんか、クスコたいしたことないね』

「そーっすね」

登りは終わったみたいだったので、とりあえず下りますかと自転車を重力に任せて転がした。

都市部だけにバスやトラックの交通量だけは一丁前に増えだして走りづらいし、排気ガスがすごい。
ちきしょー、やっぱり都市の走行は嫌いだ。

そんな気持ちで下り坂のカーブに差し掛かると、突然視界が開けた。

『!!!!!』

僕ら二人は、視界が開けた先に見える光景に強い衝撃を受けた。
この衝撃は何度か記憶がある。

カナダのブリティッシュコロンビア州からアルバータ州に入って大陸分水嶺を越えた時、
うだるような暑さの熱帯林のすき間から覗いたパナマ運河…

僕らの眼下には、ずっとずっと目指し続けたクスコの街並みがあった。
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うぉぉー、クゥスコォーーー!!!!
着いたー!!!!!

旅行作家の石田ゆうすけさんがこのアンデスを越えてクスコに着いた時のことを“狐につままれた”と表現していたが
まさにその通りでクスコの出現はあまりにも唐突で、現実と捉えるには少し時間がかかった。

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自転車は一日に進める距離が限りがある。
それが登りならなおさらその距離は短くなる。
けれど、自分の意志が途切れない限り、スピードはなくても確実に前に進む乗り物だ。
ここに到着することを信じて進んできた。

このアンデス道中、100km続く上り坂があった。
吹雪に吹かれた日もあった。
峠では必ず天気が崩れた。

愚痴をこぼしたくなることはあったけれど、目の前にあるクスコの街並みを見た瞬間どうでもよくなった。

それに自転車でしか見れない風景があった、人がいた。
自転車で走るべき道だった。

おそらく、僕の人生でこの道を走ることはないだろうけど、
クスコ到着の充足感とともに忘れ得ぬ道の一つとなった。

改めて噛み締める。

うむ。

クスコに到着したぞー!!!!
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